仮想通貨取引所で仮想通貨を購入するには、一般的に『取引所』で購入する方法と『販売所』で購入する方法の2つの取引方法があります。
あなたはこの2つの取引方法のちがいをご存知でしょうか?
今回は、この仮想通貨取引所の2つ取引方法『取引所』と『販売所』の違いと、仮想通貨取引所のノミ行為の可能性について考えてみます。
仮想通貨取引所の『取引所』と『販売所』の違いとは?
『取引所』と『販売所』の2つの取引方法では「取引相手」「価格と売買のタイミング」「手数料」の3つの点が異なります。それぞれの取引方法について順番に確認してみましょう。
『取引所』
「取引相手」:取引所では仮想通貨取引所のプラットフォームを通じて仮想通貨取引所の他の利用者と直接、売買の取引を行います。
「価格と売買のタイミング」:取引所では購入したい仮想通貨の数量と価格を自分で決めて「買い注文」を出します。それに対し他の利用者が同じ金額で「売り注文」を出していた場合に取引成立となります。
そのため自分の注文に対し「買い手」「売り手」がつかなければいつまでも売買が成立しません。
「手数料」:仮想通貨取引所の定めた取引手数料(0.01%~0.15%程度・取引量により変動)が掛かります。
『販売所』
「取引相手」:販売所では利用者は仮想通貨取引所と取引を行います。
「価格と売買のタイミング」:取引所では仮想通貨取引所の定めた価格で仮想通貨を購入します。仮想通貨所の提示した価格を支払えばすぐに購入することができます。価格には販売所の手数料(8〜10%程度)やスプレッド(買い取引時のレートと売り取引時のレートの差)が上乗せされているため『取引所』で購入する場合に比べ割高になります。
「手数料」:仮想通貨取引所の定めた取引手数料が掛かりますが、仮想通貨所によっては「しばらく無料」や「手数料マイナス」をうたっている仮想通貨取引所もあります。しかしこれはあくまで見せかけの手数料。利益は前述の販売所の手数料で十分確保していると考えられます。
このように『取引所』と『販売所』では大きな違いがあります。
『取引所』は仮想通貨取引所が売り手と買い手を取り持つプラットフォームを提供し、その利用手数料を取っているイメージでしょうか。
対して『販売所』は仮想通貨取引所が市場から買い付けた仮想通貨に独自の価格を付けて販売しています。つまり仮想通貨取引所と利用者が市場を通さずに一対一で取引しているのです。このような取引を相対取引(あいたいとりひき)といいます。
「相対取引」とは?
SMBC日興証券の「初めてでもわかりやすい用語集」によると
相対取引(あいたいとりひき)
証券取引所などの市場を通さずに、売り手と買い手が当事者同士で価格や売買数量などを決めて行う取引のことです。例えば大口の株式取引の場合、マーケットを介して売買を行うと株価が大きく変動する可能性がありますが、相対取引であれば価格変動リスクを排除したうえで、当事者同士があらかじめ決めた価格で取引が成立します。相対売買(あいたいばいばい)と呼ばれることもあります。(SMBC日興証券「初めてでもわかりやすい用語集」より)
相対取引には、市場を介さずに取引をおこなうことで大口の取引などで価格変動のリスクを排除できるというメリットがあるようです。
この相対取引は、株式以外にも、債券の一部や外国為替証拠金取引(FX)、そして仮想通貨取引所の『販売所』などでも行われています。
相対取引について、もう少しわかりやすく理解するために外国為替証拠金取引(FX)の店頭取引(相対取引)を例に考えてみます。
外国為替証拠金取引(FX)における取引所取引と店頭取引(相対取引)
FX会社は大きく分けて二種類の会社があります。一つは「取引所取引」と呼ばれる仕組みのFX会社。もう一方は「店頭取引(相対取引)」と呼ばれる仕組みの会社です。
まずこの2つの違いを確認してみましょう。
『取引所取引』
取引所取引とは取引所を通して売買する方式で、国内のFXでは東京金融取引所が市場を開設・運営する「くりっく365」の名前で知られています。利用者は取引所が提示するレートでトレードをし、顧客の注文はFX会社を通じて取引所に発注されます。
取引所のレートは、東京金融取引所が指定したマーケットメーカーと呼ばれる厳選された金融機関の値付けの中からベストベストプライスを提示するマーケットメイク方式により決められています。
例えば各マーケットメーカーの値付けが次のような場合
- 三菱東京UFJ銀行: 買い気配108.455/売り気配108.480/スプレッド2.5銭
- 野村證券: 買い気配108.455/売り気配108.480/スプレッド2.5銭
- ゴールドマンサックス証券: 買い気配108.460/売り気配108.490/スプレッド3銭
買い気配が一番高い108.460と売り気配が一番低い108.480が選ばれ、その差額の2銭がスプレッドになります。
くりっく365では「コメルツ銀行」「ゴールドマン・サックス証券」「ドイツ証券」「野村証券」「バークレイズ銀行」「三菱東京UFJ銀行」の6社の金融機関がマーケットメイカーに名を連ねており、その中から利用者に有利な価格が選ばれるという仕組みとなっています。
このマーケットメイク方式により、取引所取引では「レート」や「スプレッド」がほぼ統一されているため、透明性が高く平等な取引が行えるというメリットがあります。また取引所取引ではスワップポイント(外貨預金でいう利息のようなもの)が売り買い同額(一本値)になります。
その一方で、FX会社によっては売買手数料が掛かったり、店頭取引に比べてスプレッドが広いなどのデメリットもあります。
『店頭取引(相対取引)』
店頭取引とは、国内の多くのFX会社が取り入れている相対取引による取引方法のことです。利用者は各FX会社が提示するレートでFX会社と直接取引を行います。
店頭取引でのレートはインターバック市場のレートを元に各FX会社が独自に設定しています。同じ時間なのにFX会社ごとに各通貨ペアの配信レートやスプレッドが異なるのはこのためです。
店頭取引のFX会社は顧客獲得競争に打ち勝つために、スプレッドを低く設定したり独自のツールやサービスを提供したりして差別化を図っており、取引所取引に比べるとスプレッドが狭いというメリットがあります。通貨にもよりますが取引所取引のFX会社と店頭取引のFX会社ではスプレッドに2倍以上の開きがあります。
(参考)取引所取引と店頭取引のスプレッド比較
取引所取引 ドル円0.51~0.70銭/ポンド円2.27~3.00銭/豪ドル円 1.26~2.00銭
店頭取引 ドル円0.2~0.3銭/ポンド円1.0~1.3銭/豪ドル円0.5~0.7銭
このようにFXの店頭取引(相対取引)では、取引所取引に比べて優位な点も多いのですが、レートを自由に設定できるFX会社と利用者が直接取引するため若干不透明感があります。また店頭取引ではFX業者によるスワップポイントの中抜きがあるため、受け取りと支払いとの間に差がある点も取引所取引とは異なります。
しかもFXの店頭取引の不透明感をさらに深める要因としてDD方式という為替発注方法の問題もあります。
NDD方式(インターバンク直結型)とDD方式
店頭取引のFX会社が金融機関へ為替を発注する方法には、NDD方式(インターバンク直結型)とDD方式いう2つの方法があります。
NDD方式(インターバンク直結型)
NDD方式とはNo Dealing Desk(ノー・ディーリング・デスク)の略で、FX会社のディラーを通さず複数のカバー先金融機関が提示する為替レートで発注する方法です。
例えば、利用者が1万通貨の買い注文を出した場合、FX会社は自動的に1万通貨の買い注文をインターバンクに流します。(利用者の注文が自動でカバーされる)
インターバンク市場に近い為替レートで取引するため「インターバンク直結型」とも呼ばれます。また複数のカバー先金融機関と提携し、それらの金融機関が提示する為替レートのうち最も有利なレートで取引できるなど、取引所取引のマーケットメイク方式と同じような取引方式といえます。
為替レートにFX会社が介入することがなく、利用者の注文が自動でカバーされるため透明性の高い取引が可能です。
DD方式のFX会社ではスプレッド分が利益になり、利用者の取引量や取引回数が増えることで利益が増えます。
DD方式
DD方式とはDealing Desk(ディーリング・デスク)の略で、利用者の注文をFX会社のディーラーが自社で処理する方法です。日本の多くのFX会社が採用しています。
このDD方式では、利用者からの注文はFX会社のディーラーのところに行きます。その際、利用者の注文をインターバンクに流す流さないはFX会社の自由になっています。そのためディーラーは注文をインターバンクにそのまま流すもありますが、他の利用者の買い注文・売り注文をぶつけて相殺したり、何もせずに飲んだりすることもあると言われています。この場合、利用者の負けがそのままFX会社の利益になります。このように取引を成立させることをノミ行為といいます。
ノミ行為は、商品取引では顧客に損害があろうとなかろうと禁止されていますが、FXなどの金融取引では
事前に投資家に告知しており、最良執行方針に則っていれば、取次業者が、取引所に出さずに執行しても良い場合がある(いわゆるノミ行為を認める)
と容認されています。
だだでさえ参加者の9割が負けるといわれるFXです。百戦錬磨のディーラーが下手くそな利用者の負けを呑んでしまうことは十分にあり得るような気がします。
さらにDD方式では「価格操作ができるFX会社がディーラーを務めている」という点も取引の不透明感を高めていると思います。利用者の負けがそのまま利益になるFX会社が価格を操作できるのです。
FXでは昔からよく「為替レートに不自然な長いヒゲな出てストップが刈られてしまう」といういわゆる「ストップ狩り」があるのではいう噂が囁かれています。このような噂が絶えないのは、実際に行なっているかどうかは別にして、FX会社が意図的に価格操作をすることができることが原因だと思います。
利用者の負けが利益になるFX会社が価格を意図的に操作できると考えると、FXの店頭取引におけるDD方式の闇は深いような気がするのは私だけでしょうか。
また、FX会社によっては「勝ちすぎたり」「超短期の秒スキャルピングをして利益を出したり」すると口座が凍結されてしまうという話も耳にします。また預託金額が増え大口の取引をするようになると担当がつくという話を聞いたこともあります。
もし利用者の取引量や取引回数ではなく、利用者の負けが利益につながるような話が本当ならそういうことがあっても不思議ではありませんが果たして真相はどうなのでしょう。
仮想通貨取引所の取引方法とノミ行為について考える
FXの話が長くなってしまいました。もう一度仮想通貨取引所の話に戻ります。
仮想通貨取引所の取引方法には前述の通り「取引所」と「販売所」があります。そのうち「販売所」はFXの「店頭取引」と同じような「相対取引」で行われています。
ところでこの仮想通貨取引所の「販売所」の取引方法とFXの「店頭取引」、なんだか似ていると思いませんか?
- 利用者は仮想通貨取引所(FX]会社)と直接取引を行います。
- 仮想通貨取引所(FX会社)の定めた価格(レート)で取引を行います。
- 価格(レート)には仮想通貨取引所(FX会社)の手数料やスプレッドが上乗せされます。
どちらも同じ相対取引なので似ているのは当然かもしれません。それなら、もしかしたら仮想通貨取引所の販売所でもFX会社のDD方式のようなことが行われている可能性もあるのかもしれません。
ちなみに一部の仮想通貨取引所でもFX会社のように「稼ぎすぎる」とアカウントが凍結されたり「スプレッドがものすごく開くようになる」ということがあるようです。
さらに相対取引には「市場を介さずに取引をおこなうことで大口の取引などで価格変動のリスクを排除できる」という利点もあります。
為替のインターバンクレートのような指標となる価格のない仮想通貨では、たくさんの利用者を持つ仮想通貨取引所のさじ加減次第では市場価格を変動させることだって出来てしまうかもしれません。
もしそうなら仮想通貨取引所は「販売所(相対取引)」でたくさんの仮想通貨を売買しながら、「取引所」で大規模な買いや売りを仕掛けて価格をコントロールすることだって出来るのかもしれません。
自分で価格を決めて販売し、自分で市場価格をコントロールして、それでノミ行為があるとしたら・・・。もしかしたら年末の急騰や最近の急落も誰かの意図が働いていたりして。
・・・おや、誰か来たようだ。
コメント
なるほど、勉強になりました。
このたびノブナガの仮想通貨ブログというサイトを作りました。
もしよければ参考程度にみてください(^^)
https://blog.hatena.ne.jp/youdan/youdan.hatenablog.com/
羊ノブナガさん、コメントありがとうございます。サイト少し拝見しました。仮想通貨や投資関連の記事がとても充実していますね。勉強させていただきます!
GMOコインはDD方式だとさっき他の方のブログで読みました!
id:lapiano111さん、コメントありがとうございます。GMOコインはHPに「取引所ではない」とあり、仮想通貨販売所に近いもののようですね。会社との相対取引な上に、突如、スプレッドが開くなんて噂を聞くと確かにNDD方式では無さそうです。