こんにちは。
あなたは、資産形成に取り組んでいますか?
「貯蓄から投資へ」がいつの間にか「貯蓄から資産形成へ」と言い換えられて久しいですが、政府はここにきてますますその動きを加速しています。
2018年4月21日には、金融庁の主催する「つみたてNISAフェスティバル(#つみフェス2018)」という個人投資家向けのイベントが開催され、「something pink(何かピンクのモノ)」というドレスコードが設定された東京・赤坂の会場は、ピンクの服や小物でコーディネートした250人の投資家で溢れかえったそうです。
さらに、この日には、つみたてNISAの広報を担う「つみたてNISA公式キャラクター」が「つみたてワニーサ」に決定したことも発表。さっそくTwitterの公式アカウントも開設され盛り上がっているようです。
なんとなくお堅いイメージの金融庁らしからぬやわらかなイベントや親しみやすいキャラクターに、金融庁ひいては政府の目論む「貯蓄から資産形成へ」の本気度が伺えるような気がするのは私だけでしょうか?
でも、金融庁はなぜここまで「貯蓄から資産形成へ」の普及に躍起になっているのでしょう?
今回は、 政府がわたしたち国民に資産形成を推奨する本当の理由について考えてみます。
「貯蓄から投資へ」から「貯蓄から資産形成へ」
「貯蓄から投資へ」を政府方針として明確に取り上げたのは小泉内閣です。
2001年(平成13年)6月に小泉内閣によって閣議決定された「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針概要(いわゆる 「骨太の方針第1弾」)」にこの方針が示されています。
「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針概要」と聞いてもほとんどの方は???となる方と思います。でも
「聖域なき構造改革」
といわれればご記憶の方も多いのではないでしょうか。
「小泉構造改革」とも呼ばれた当時の小泉内閣の経済政策スローガン「聖域なき構造改革」で掲げた内容こそが、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針概要」なのです。
この中で提示された「構造改革のための7つの改革プログラム」の1つに明記された
「頑張りがいのある社会システム」を構築するため、従来の預貯金中心の貯蓄優遇から株式投資などの投資優遇へという金融のあり方の切り替えや起業・創業の重要性を踏まえ、税制を含めた諸制度のあり方を検討する。
という骨太の方針を受けて、金融庁は平成13年8月に「証券市場の構造改革プログラム」を取りまとめました。その中で、
証券市場を活性化し、直接金融(含む市場型間接金融)の機能を高めることが喫緊の課題であるとされ、個人投資家の「貯蓄から投資への転換」を推進する。
と「貯蓄から投資へ」ということが謳われているのです。このときに具体的な課題としてつぎの4点が指摘されました。
① 証券市場の信頼向上のためのインフラ整備
② 魅力ある投資信託の実現
③ 税制改革
④ 投資家教育
いま普及が推進されている「NISA」「つみたてNISA」「iDeCo」も、この時の課題の解決策の1つとして登場したと考えられます。
「貯蓄から投資へ」はその後、2016年頃に「貯蓄から資産形成へ」と言い換えられるようになります。
これは、日本ではまだまだ「投資」と「投機」の意味合いの違いがわかっていない人もおり、「投資」という言葉に対する誤解があることに配慮して、資産を積み立てて長期的に増やすという意味での「資産形成」という言葉に変えられたような気がします。
日本人の投資はどれくらい増えたの?
2001年と実はかなり前から掲げられていた「貯蓄から投資へ」という政府方針ですが、では、それから日本人の投資はどれくらい増えたのでしょう?
日銀の資金循環統計によると、「貯蓄から投資へ」というスローガンが掲げられる前の家庭の金融資産構成は次のとおりでした。
家庭の金融資産構成(1999年12月末)
現金・預金 ・・・・・54.0%
債券・・・・・・・・・5.3%
投資信託・・・・・・・2.3%
株式・・・・・・・・・8.1%
保険・年金 ・・・・・26.4%
その他・・・・・・・・3.9%
出典:欧米主要国の資金循環統計(2000年11月/日本銀行調査統計局)
その後の「聖域なき構造改革」による小泉旋風があり、「貯蓄から投資へ」という方針の発表がありました。それから18年を経た2017年の家庭の金融資産構成はどのようになっているのでしょう。
「きっと、タンス預金が投資に回されているにちがいない」
そう期待しながら確認した結果は次のとおりでした。
家庭の金融資産構成(2017年12月末)
現金・預金 ・・・・・51.1%
債券・・・・・・・・・1.3%
投資信託・・・・・・・5.8%
株式・・・・・・・・・11.2%
保険・年金 ・・・・・27.7%
その他・・・・・・・・2.9%
出典:2017年第4四半期の資金循環(速報)(2018年3月/日本銀行調査統計局)
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驚くほど変わっていませんでした_| ̄|○
若干「投資信託」や「株式」の割合が増えてはいますが、依然として金融資産の5割以上が「現金・預金」で占められたままです。
これでは、政府や金融庁が「貯蓄から資産形成へ」の普及に躍起になるのもうなずけます。
「貯蓄から資産形成へ」にかける政府・金融庁の本気度
小泉政権時の「貯蓄から投資へ」のスローガンの下、2003年からは証券税制の優遇措置を導入するなど、政府および金融庁は「貯蓄から投資へ」の積極的な転換を図ってきました。
証券税制の優遇措置
株式、株式投資信託の配当、キャピタル・ゲインなどの税率を20%から10%へと引下げた優遇措置。2013年末に終了。
しかし、その後、2007年のサブプライム住宅ローン危機、2008年のリーマン・ショックを引き金とした世界的な株価下落局面があったことも響いてか、現預金比率は50%前後のまま推移。「貯蓄から投資へ」の転換は実現に至りませんでした。
しかし、とうぜん政府や金融庁はこれで諦めたわけではありません。
スローガンを「貯蓄から資産形成へ」に刷新し、さらに金融庁の肝いりの「NISA」「つみたてNISA」や厚生省が推進する「iDeCo」は徐々に認知度が高まり、利用者も少しずつ増えてきています。
金融庁のデータによると「つみたてNISA」の口座開設者は20~40代が約7割を占めるなど、若年層を中心に普及している傾向が顕著です。
また、冒頭にご紹介した「つみたてNISAフェスティバル(#つみフェス2018)」や「つみたてワニーサ」をはじめ、金融庁も若者層への普及に積極的な様子。
金融庁が開設している「NISA特設ウェブサイト」でも、若年勤労世代向けのビデオクリップ教材を提供するなど若い人をかなり意識していることが伺えます。
このビデオクリップ教材「未来のあなたのために~人生とお金と資産形成~」は、金融庁のホームページで閲覧できるだけでなく、ダウンロードして職場の投資セミナーや、ファイナンシャル・プランナーによる投資教育セミナーや個別相談業務にも利用することができるという力の入れようです。
ホームページには動画だけでなく、動画コンテとナレーション文字データまで掲載されており、まさに至れり尽くせり。こんな所からも「貯蓄から資産形成へ」にかける政府・金融庁の本気度を感じることができます。
政府が資産形成を推奨する本当の理由
でも、政府や金融庁はどうしてここまで「資産形成」を推奨しているのでしょう。
「NISA」「つみたてNISA」「iDeCo」は運用益が非課税で全額所得控除の対象になるなど投資家にとってはメリットの多い制度ですが、裏を返せば政府にとってみれば税収が減ってしまうことでもあるはずです。
それなのに、国がこのような非課税制度を認めてまで「資産形成」を推奨するのには理由があるのです。そのヒントは、日本が今、直面している状況にあります。
1つは、本格的な人口減少社会の到来です。
日本の人口は平成27年国勢調査(人口等基本集計)の結果、大正9年以来初めて総人口が減少して以降、日本は着実に「人口減少」局面に入っています。
それをさらに裏付けるように、日本の15歳未満の子どもの数は2018年4月1日時点で、前年より17万人減少し、1553万人となり、37年連続で人口が減少してることが総務省の発表でわかりました。
一方、「人生100年時代」といわれる現代において、高齢者の数は確実の増えていっています。総人口の減少と長寿化が相まって人口構成は一段と高齢化が加速。それにより2048年には70歳以上人口が総人口に占める比率が31.4%にまで達するといわれています。
これによって起こりえる事態。それは現役世代の社会保障負担の増加と、高齢者世代の受給できる社会保障費の減少です。
すでに年金支給開始年齢の引き上げや支給額の減額、さらに定年年齢の延長などが行われていますが、これらの動きは今後も進んでいくことが考えられます。
つまり、年金の支給開始はますます遅くなり、さらに支給額も減り、そのために定年年齢はますます伸びていくのです。
これを回避するためには、老後を豊かに暮らすことができるように若いうちから「資産形成」することが重要です。つまり「貯蓄から資産形成へ」とは、
これまでのような手厚い社会保障は難しいの。
だから代わりに非課税制度や優遇措置を充実させました。
だから自分たちで老後資金を殖やしてくださいね(⋈◍>◡<◍)。✧♡
という政府からの熱いメッセージなのです。
まとめ
「長生きリスク」「老後破産」の危機など、これまで以上に老後を見据えたマネープランの作成の重要性が高まっている現代社会。「NISA」「つみたてNISA」「iDeCo」は、そんな危機を回避し豊かな老後を迎えるための手段の1つです。
資産は短期間でいきなり増やすことは難しいもの。毎月、少しずつでも積み立てて長期的に資産を殖やすことで「資産形成」して、豊かな老後を迎えられるようにしましょう。
【貯蓄から資産形成へ】政府が資産形成を推奨する本当の理由の考察は以上です。
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