2016年8月に公開され、国内動員数1,900万人を突破するなど空前の大ブームを巻き起こした映画「君の名は。」
新海監督自らが執筆した小説版も150万部を超え、ハリウッドでの実写映画化も決定。さらに2018年1月3日に地上波初放送された際にも「総合視聴率26.3%(視聴率17.4% タイムシフト視聴率11.7%)」と映画ジャンル過去最高記録を達成するなど、今でも根強い人気の作品です。
うちの子どもも先日のテレビ放送を録画して視聴し、とても良かったといっていました。よほど面白かったようで1度一人で観たのに、もう一度、今度は私と一緒に観て「シーンごとに私に解説してくれる」という熱の入れようでした。
瀧くんと三葉がはじめて出会うことができたシーンでは
「誰そ彼時・・・彼は誰時・・・」
最後のシーンでは
「ここは瀧くんが勇気をみせたから上手くいった」
とこんな感じです。
今日は、そんな『君の名は。』が面白いという子どもに『秒速5センチメートル』を観せたらどうだったかというお話です。
映画『秒速5センチメートル』とは?
まず 『秒速5センチメートル』について振り返ってみます。
【あらすじ】
小学生のタカキとアカリは、特別な想いを抱きあう中。しかし卒業と同時に、アカリの引越しにより離れ離れになってしまう。中学生になり文通を重ねる2人だが、今度はタカキも鹿児島への転校が決まる。引越す前にアカリに会おうと、大雪の中タカキはアカリの元へ向かうが…。時は過ぎ、種子島で高校3年生になったタカキは、同じクラスのカナエに好意を寄せられながらも、ずっと遠くを見つめていた。カナエにとってタカキは、一番身近で、遠い憧れだった。やがて東京で社会人になったタカキは、仕事に追われ日々輝きを失っていく街並みを前に、忘れかけたあの頃の記憶に想いを巡らせる。
サブタイトルに「a chain of short stories about their distance(彼らの距離についての連続した短編)」とあるように、
- 小・中学生時代のエピソードを描いた「桜花抄」
- 高校時代のエピソードを描いた「コスモナウト」
- 社会人時代のエピソードを描いた「秒速5センチメートル」
の3つの短編の連作となっています。
これは、元々、当時たくさん制作していた短編作品を、劇場公開を見据えて、ストーリー的につながりやすいものをまとめ直して1つの物語にしたためにこのような作りになっているそうです。3つの作品はもともとは別々のお話だったんですね。
キャッチフレーズの「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。」は
、まるで映画のラストを象徴したよう。
そのストーリー展開から、一部では「鬱アニメ映画」ともいわれています。
主題歌「One more time、One more chace」について
『秒速5センチメートル』といえば、山崎まさよしさんの主題歌「One more time、One more chace(ワン・モア・タイム ワン・モア・チャンス)」でも知られていると思います。
この映画を作るにあたり、新海監督がインスパイアされたということで、1996年に発表されていたこの曲の利用を山崎まさよしさんにお願いし許諾いただいたそうです。
この曲は、今でこそ『秒速5センチメートル』として良く知られていますが、もともとは1996年に公開された映画『月とキャベツ』の主題歌でした。
【あらすじ】
人気バンド「ブレインズ」のボーカルだった花火(山崎まさよし)は、バンド解散後東京から離れた田舎で音楽活動から離れキャベツを栽培する生活をしていた。周囲からは音楽活動への復帰を期待されていたが、本人はそんな周囲の声に戸惑っていた。そんなところに、花火のファンであるという謎の少女ヒバナ(真田麻垂美)が現れる。花火とヒバナ、向かい合わせの孤独が呼び合って、ひと夏限りの永遠が始まろうとしていた。(Wikipediaより)
山崎まさよしさん映画デビュー作のこの作品では、
(山崎さんが演じた)スランプに陥ったミュージシャンが、ファンだという女性との出会いから再び創作意欲を取り戻し、遂に「One more time, One more chance」を完成させる。
というストーリーでした。歌詞の中には、山崎さんが上京して住むことになった「桜木町」の地名も出てくるように、この曲は山崎さんにとって「自伝的」な曲といえるかもしれません。
『月とキャベツ』のサブタイトル「どれ程の痛みならば、もう一度あなたに逢えるの。」は、「One more time, One more chance」の最初のフレーズ「どれ程の痛みならば もういちど君に会える」からきていると思います。
『君の名は。』のキャッチフレーズ「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。」も、「One more time, One more chance」からきているのかもしれません。
映画のテーマ「2人の心の距離と、その近づく・遠ざかる速さ」について
『秒速5センチメートル』を制作した際のインタビューで新海監督は自身の作品について
『秒速5センチメートル』は前作の『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』と同じように「主人公の2人の心の距離と、その近づく・遠ざかる速さをテーマとしたもの」である。
というような言っていました。
『ほしのこえ』では「宇宙に飛び立った少女と地上の少年」との距離感を、『雲のむこう、約束の場所』では「世界(パラレルワールド)に阻まれた少女と少年」を、『秒速5センチメートル』では「いつのまにかすれ違ってしまった気持ちと、時の流れによって離れてしまった男女の心の距離」を描いているような気がします。
そしてこのテーマは、それ以後の作品『星を追う子ども』『言の葉の庭』にも通じているところがあるような気がします。『君の名は。』でも「入れ替わりと時間のズレによる2人の距離と心模様」が物語の原動力となっていると思います。
この「心の距離」は、それはちょっとしたさじ加減で、結果を大きく変えてしまいます。
もし『秒速5センチメートル』のタカキとアカリの手紙のやり取りがずっと続いていたら、最後のシーンは『君の名は。』のようになったのかもしれません。
逆に『君の名は。』も、もし最後に出会うのが『秒速5センチメートル』のように社会人になってからだったら、もし瀧くんが声を掛けなければ、『秒速5センチメートル』のような結果になっていたかもしれません。
(もしそうなら、きっとここまでヒットしなかったでしょう)
『君の名は。』が面白いという子どもに『秒速5センチメートル』を観せてみた結果
最後に、うちの子どもが『秒速5センチメートル』を観ていった一言でこの記事を終わりたい思います。
「ごめん、寝とったわ」
スルースキルが高い息子でした。
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