2018年1月より放送されている京都アニメーションの最新作『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。
京アニといえば作画のレベルがすごいことでも有名ですが、今作もまるで劇場版かと思うほど美しい作画が印象的です。だた1話・2話と観た際は、作画程にはストーリーには引き込まれませんでした。
それが今回の3話を観た時に、何となく昔のことを思い出しました。今日は、そのことを少し考えてみようと思います。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ってどんなお話
まずは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』がどういうお話なのか振り返ってみます。
あらすじ
とある大陸の、とある時代。大陸を南北に分断した大戦は終結し、世の中は平和へ向かう気運に満ちていた。戦時中、軍人として戦ったヴァイオレット・エヴァーガーデンは、軍を離れ大きな港町へ来ていた。戦場で大切な人から別れ際に告げられた「ある言葉」を胸に抱えたまま――。
街は人々の活気にあふれ、ガス灯が並ぶ街路にはトラムが行き交っている。ヴァイオレットは、この街で「手紙を代筆する仕事」に出会う。それは、依頼人の想いを汲み取って言葉にする仕事。彼女は依頼人とまっすぐに向き合い、相手の心の奥底にある素直な気持ちにふれる。そして、ヴァイオレットは手紙を書くたびに、あの日告げられた言葉の意味に近づいていく。(ヴァイオレット・エヴァーガーデン公式サイトより引用)
主人公のヴァイオレット・エヴァーガーデンは、かつて戦場で拾われ、類まれなる戦闘能力を保持していたことから少女兵としてライデンシャフトリヒ軍で起用され戦争に参加していました。
上官であるギルベルト少佐を慕い、その「道具」として軍に貢献した彼女は、別れ際にギルベルト少佐から告げられた「愛してる」の意味を理解できずにいました。
その彼女は、戦後、人に代わり手紙を代筆する自動手記人形(オートメモリーズドール)という仕事を知り、人の気持ちを汲み取り手紙を代筆する自動手記人形になれば、「愛してる」の意味を知ることができると考え、C・H郵便社で自動手記人形として働くようになります。
ヴァイオレットが自動手記人形の仕事を通じてさまざまな人と触れ合い、言葉の意味を探す姿を描いた物語、それが『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』です。
わたしは愛してるを知りたいのです。
戦場で「武器」と称されて戦うことしか知らなかった主人公のヴァイオレットさんは、大戦で両腕を肩先から失い、義手を装着しているにも関わらず正確かつ早いタイピング速度を持っています。また、文法や語彙などの学科も完ぺきに理解しています。
そんな彼女は、ただ1つのことが理解できません。それは「感情」。
戦うことしか知らない彼女は、相手の気持ちを理解することや、自分の気持ちを表現することができないのです。
そんなヴァイオレットさんが自動手記人形(通称:ドール)の仕事に就きたい理由が
「わたしは愛してるを知りたいのです。」
ですが、「感情」を理解できない彼女は、当然ですが、人の気持ちを汲み取り手紙を代筆するドールとしてはポンコツです。
まるでロボットのように任務を完ぺきにこなす彼女ですが、ドールの仕事はまったくもって「適性のない仕事」だと思います。
そんなヴァイオレットさんを観て、ふと昔の自分を思い出しました。
わたしは言葉をうまく伝えたいのです。
子どもの頃から、私は、自分が他者に上手く言葉を伝えることができない、とつねに感じていました。
自分が考えていること、思っていることがうまく伝わらない感じ。
「そんな風に思っているのではないのに・・・。」
「そうじゃないよ・・・。」
両親や、同じクラスの同級生たち、学校の先生・・・。なんだか上手く伝えられないという想いに、私はいつしか周囲との間にカベを作るようになっていたような気がします。
そんな私は、ある時「コピーライター」という仕事を知りました。
「短い言葉で商品に込められた想いを的確に伝える」その仕事に携われば、私も上手く言葉を伝えられるようになるかもしれない。
そう思った私は、コピーライター養成講座に通い始めます。
(ちなみに『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』3話では、ヴァイオレットさんがドールになるための学校に通います)
しかし、元々、言葉にコンプレックスのある私です。はじめはまったくもって評価されません。そればかりか、同じ講座に通う同級生たちともなかなか馴染めませんでした。
その養成講座は、実際に広告代理店などでコピーライターとして現役で活躍している方が毎回講師として登壇していました。また、参加している同級生も半数以上がすでに広告制作会社などでコピーライターをしている人でした。
そんな中で、「言葉をうまく伝えたい」という理由で参加している私は、ある意味異質だったでしょう。
ある時、講師の方に自由に質問をする機会がありました。他の人が過去のキャッチフレーズや広告技法の話を尋ねる中、私は大まじめな顔で質問しました。
「言葉を、気持ちをうまく伝えるには、どうすればいいでしょうか?」
「あなたが、良き自動手記人形になりますように」
自動手記人形養成所に通うヴァイオレットさんは、学科の成績も良く、タイプもとても早く正確ですが、人の言葉の裏側にある感情を読むことができないため、ドールとしてはとても残念な感じです。
授業でクラスメイトから大切な人への手紙をお互いに代筆するという課題で、ルクリアさんの両親に宛てた手紙を代筆する際にも、このような状況なのです。
拝啓
父上様、母上様
久々の手紙ですが、伝達事項はありません。
以前からの件に、感謝を伝えていないことを懸念しております。
一緒に行った場所、行きたかった場所について伝えるべき情報は無し。
当方は現在、鋭意、努力中。
状況は健康。無事。問題は起きておりません。
以上。くれぐれも憂慮なきよう。
ルクリア
このヴァイオレットさん、第2話でもC・H郵便社で代筆を依頼したお客様を激怒させるというトラブルを何度も起こしています。
やはりどう考えてもドールの仕事には向いていません。
案の定、9名の同級生が卒業する中、彼女は養成所を卒業することができませんでした。知識や技術が完ぺきなのにも関わらずです。
しかし、そんな彼女がルクリアさんがずっと気持ちを伝えらえないでいるお兄さんへの手紙を代筆した時に、はじめて感情のこもった手紙を書くことができたのです。
「あなたが、良き人間関係を構築できますように」
コピーライターとしてとても適性があるとはいえない私ですが、養成講座ではその後、いくつかの課題で認められ、他の受講者からも自然に声をかけられるようになりました。
私自身も、人と関わるのが辛いことのが多いと思っていたのですが、それも授業の一環として、私なりに関わろうと努力していたこともあり、なんとか”ぼっち”という状況ではなくなりました。
そんな私は、コピーライターという肩書ではありませんが、今も広告の仕事に携わっています。今でも広告文を制作することもあります。
仕事では成果を出すことはとても重要なことです。もし満足な成果を出すことができないのであれば辛い思いをすることも多いと思います。だから、成果を出せるか出せないかに重点を置いた場合、自分の適性を考えた仕事を選んだほうが効率的だと思います。
そういった意味では、私はあまり適性のない仕事に就いてここまで来たような気もします。
実際、就職・転職活動でも適性検査が選考の一つにされていますし、就職後の配属でも本人の希望だけではなく、面談等から判断したその人自身の適性から判断して決められることがあります。
でも、ヴァイオレットさんはドールの仕事に出会わなければ、いつまでも「感情」を理解できないままでしょう。
私の言葉へのコンプレックスも、今以上にひどかったかもしれません。
だから、私は私にこう伝えたい。
「あなたが、良き人間関係を構築できますように」
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