知らないでは済まされない仮想通貨の課税タイミングと税金の話

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億り人の皆さん、ちゃんと確定申告していますか?

こんにちは。

2018年3月8日、金融庁は国内の仮想通貨交換業者7社にに対して行政処分を実施しました。このうちの2社(FSHO、ビットステーション)は業務停止命令、5社には業務改善命令が出されており、その中には仮想通貨交換業の登録を受けていた「Zaif(テックビューロ)」「GMOコイン」の2社も含まれていました。

そんな中、今回が2度目の業務改善命令となるみなし仮想通貨交換業者の「コインチェック」は、ホームページにてリリースを配信。その中で来週中を目途に以下の対応を実施することを発表しました。

  • 不正流出したNEMの補償について実施する。
  • 技術的な安全性等の確認が完了した仮想通貨から順次一部サービスを再開する。

NEMの補償はまだしも、行政処分が実施されたこのタイミングで翌週からのサービス再開が本当にできるのかという思いはありますが、とりあえずコインチェックに仮想通貨を預けていた人にとっては朗報ではないでしょうか。

一方、NEMの補償を受ける方は、不正流出したNEMではなくJPYで補償されるため「強制的な利益確定」となってしまいます。そのために意図せずに「億り人」になってしまう方もいるかもしれません。そして「利益確定」してしまえば、当然、課税の対象になり気を付けないと大変な目にあってしまう可能性もあります。

税金については「知らないでは済まされない」大変厳しい罰則もあります。

今回は、仮想通貨の課税のタイミングと税金について考えてみます。

仮想通貨で得た利益は「雑所得」

仮想通貨取引に関する法令はまだしっかり整備されているとは言い難い状況ですが、税金については明確な法令が定められています。2017年12月に発表された国税庁の「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」によると、

仮想通貨の取引で得た利益は雑所得に分類され、所得税の確定申告が必要となります。

と明記されています。

所得税法では、その性格によって所得を10種類に区分しています。

例えば、サラリーマンなら勤務先から受ける給料、賞与などは「給与所得」、経営者であれば事業で得られた収益は「事業所得」、他にも預貯金の利息などの「利子所得」、株式などの「配当所得」、不動産の運用による「不動産所得」。他にも「退職所得」「山林所得」「譲渡所得」「一時所得」など。

そして「雑所得」は他の9区分の所得に該当しない所得で、仮想通貨の利益は税制上不利な「雑所得」に分類されます。

利益の半分以上が税金!?

所得の種類によって所得税の計算方法が異りますが、仮想通貨の「雑所得」はその中でも税制上最も不利な「総合課税」という方式で税率が決まってしまいます。

「雑所得」でも、利益が20万円(主婦や学生など扶養されている方は33万円)を超えななければ申告の必要はありません。

しかし20万円を越えると「総合課税」方式により、給与所得など雑所得以外の所得もすべて合計したうえで、金額に応じた税率(累進税率)が決まります。

その税率は金額により5%~45%が適用。これに住民税10%も掛かるため最大55%もの税金が掛かるのです。

(平成27年分以降)

所得税の速算表〈国税庁ホームページより〉
課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

例えば、仮に給与所得が300万円の人が仮想通貨で1億年の利益を得た場合、

(300万円+1億円ー(控除額)4,796,000円)×0.45=4,4191,800円

→約4,400万円の所得税が掛かります。これに加えさらに住民税が約960万円程掛かるとすると、利益の半分以上の金額を税金として納める必要があるのです。

ちなみに同じ雑所得でもFX(外国為替証拠金取引)では「総合課税」ではなく「申告分離課税」が適用され、その税率は所得に関係なく一律20%になります。FXなら1億円の利益でも税金は2,000万円で済むのです。

仮想通貨が課税対象となるタイミング

先程の国税庁の「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」によると、

仮想通貨を「売却」又は「使用」することにより生じる「利益」が雑所得に区分され所得税の対象になります。

とされています。「売却」「使用」とありますが要は利益確定した際が課税のタイミングとなります。では、それぞれのケースについて考えてみます。

仮想通貨の「売却」

仮想通貨を売却する場合は、購入時の価格と売却価格との差額が利益として課税対象となります。

例えば、5万円で購入した仮想通貨を10倍の50万円になった際に売却した場合、45万円が雑所得として所得税の対象になります。

仮想通貨の「使用」

仮想通貨を「使用」して商品などを購入した場合も「利益が確定した」とみなされ課税の対象となるので注意が必要です。

例えば、ビックカメラで50万円のテレビをビットコインで購入した場合。仮にこの支払に利用したビットコインの購入価格が5万円だったとすると、

商品購入価格50万円ービットコイン購入価格5万円=45万円

と45万円が雑所得として所得税の対象になります。

他の仮想通貨との「交換」

仮想通貨を他の仮想通貨と交換した場合も、商品購入などの場合と同じく「利益が確定した」とみなされ課税の対象となります。

例えば、50万円相当のビットコインを他の仮想通貨と交換した場合は、50万円で「利益が確定した」とみなされ購入時の価格との差分が課税対象になります。交換した50万円分のビットコインの購入価格が5万円だった場合は45万円が雑所得として所得税の対象となるのです。

仮想通貨を「交換」する際の注意点

仮想通貨を他の仮想通貨に「交換」する場合には、「交換」が「利益が確定した」とみなされ課税の対象になることに注意しないと大変な目に合ってしまう可能性があります。

例えば、50万円分の仮想通貨を別の仮想通貨に「交換」した後、価格が暴落して価値が5万円に下がってしまった場合にも、「交換」した際の利益は課税されてしまいます。つまり、保有している仮想通貨の価値が下がってしまっているにも係わらず、一度「利益が確定した」とみなされるため利益確定時の税金を支払わなければならないのです。

これが、もし仮に購入価格50万円のビットコイン5,000万円分を全て他の仮想通貨に「交換」してしまっていたとしたら2,500万円を超える税金の支払い義務が発生してしまいます。

この場合、年をまたぐ前に交換した仮想通貨を売却すれば、仮想通貨の「利益」と「損失」を相殺することができます。しかし、もし「損失」を確定せずに年が変わってしまうと「損しているのに高額の税金を納めなければならない」という事態になってしまう可能性もあるのです。

税金からは逃げられない

もし、税金を払うだけの資金を確保しないままに仮想通貨の資産価値が下がってしまって納税できなくなってしまったら・・・。

「そんな時は自己破産すれば」

と安易に考えている方は特にご注意ください。なぜなら

税金滞納は破産の理由と認められない

からです。当然、清算手続きもできません。

税金を滞納した場合の債権は滞納期日に応じて、

財団債権:直近1年分の滞納税金
優先的破産債権:1年以上滞納された税金

の2つに区分されます。

このうち「財団債権」は自己破産の対象にならないので、例え自己破産手続き中であっても、支払いをしなければなりません。また「優先的破産債権」も破産法253条1項により「非免責債権」と規定されており、自己破産をしても免責されることはないのです。

つまり、税金はたとえ自己破産しようが免責されることがなく支払い義務が残ってしまうのです。

税金は、そうなってしまってから「知らなかった」では済まされないのです。

まとめ

昨今の仮想通貨の盛り上がりであまり良く理解しないまま多くの資産を得た方も多くいらっしゃると思います。

しかし、利益を得た場合は当然、納税の義務も発生します。その際、確定した利益を、日本円にて回収し納税資金を手元に残していればとりあえず困ることはありません。しかし、仮想通貨を他の仮想通貨に「交換」したり、利益確定して得た資金で再び仮想通貨を購入して、その仮想通貨の価格が下落した場合「納税しなければならないのに、下落した仮想通貨を売ってもお金が足りない」なんてことに陥ってしまう可能性もあるのです。

そうならないために、どのタイミングで課税されるのかを理解し、納税できるだけの資金を確保しておくなどの対策を考えておかないと、折角の「億り人」も仮想で終わってしまうかもしれません。

コインチェックのNEM補償による「強制利益確定」で資金を得た方もご注意いただければと思います。

仮想通貨の課税のタイミングと税金についての考察は以上です。

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