こんにちは。
あなたは普段、無意識に「〇〇しなければならばい」と自分を追い立てているように感じることはありませんか。
なぜだかわからないが、とにかく「〇〇しなければならない」と感じてしまったり、「〇〇しない」「〇〇できない」と落ち着かなかったり、罪悪感を感じてしまう。
もしかしたらそれは、幼少期にあなたが無意識のうちに取り込んでいった「拮抗禁止令」のせいかもしれません。
今回は、あなたの行動を駆り立てる「拮抗禁止令」について考えてみます。
拮抗禁止令ってどういうもの?
拮抗禁止令とは、幼少期に親の役割をもつ人から与えられた「〇〇しなさい」「〇〇したほうがよい」「〇〇であるべき」という、いわゆる「〇〇しろ」というメッセージを受けて、そのよう生きていこうと「決断」することで自らに課したものです。
これらのメッセージは、社会で生きていく上で大切だと親が信じているルールや価値観を、親が良かれと思って、しつけとして発信されることが多いです。
そのため拮抗禁止令には、社会でいきていくためにある程度必要な要素を伝えるという作用がある反面、過度なしつけなどでそのメッセージが子どもの心を強く支配するようになるとネガティブに作用してしまうこともあります。
なかでもとくに厄介なのが、別名、「ドライバー」とも称される5つの「拮抗禁止令」です。ドライバーというその名の通り、その人の行動を駆り立ててしまうのです。
あなたを駆り立てる5つのドライバー
ドライバー(Driver)とは、アメリカの臨床心理学者テイビー・ケーラー氏が名付けた、人の行動を駆り立てるメッセージのことです。
ドライバーは、特にストレスにさらされると顕著になり、その人の行動を「駆り立てる」「追い立てる」作用をします。
ドライバーには、以下の5つがあります。
1.完全であれ(Be Perfect)
「完全であれ」は、子どもの頃、親から繰り返ししっかりやるように求められ、きちんとしていないと認められなかった経験を繰り返すことで、完全でなければならないと決断してしまうドライバーです。
このドライバーを持つ人は、常に完全を求めるあまり、自分にも他人にも厳しくなる傾向にあります。他人の欠点が目につき、指摘せずにはいられないのも特徴です。また、完全でないことに対してあせりや不安を感じ、完全でいられない状態に強いストレスを感じます。
仕事面では、ハードワーク取り組み、優れた結果を達成することができる一方で、失敗への恐れによるコントロールの喪失や、過労、他者に対し必要以上に完全であることを期待するといった問題につながることがあります。
「完全であれ」という強いメッセージは「間違いを犯すな」「リスクを負うな」「お前であるな」「子どもであるな」のような禁止令となって、思考や行動の制限を課してしまうこともあります。
2.他人を喜ばせろ(Please Others)
「他人を喜ばせろ」は、子どもの頃、辛いときや苦しい時にも「笑顔でいなさい」というように、自分の気持ちを我慢して人を優先させることを求められてきた人が、無意識のうちに決断してしまうドライバーです。
このドライバーを持つ人は、他人に親切にして喜んでもらわなければ自分には価値がないと感じ、自分の気持ちよりも、他人の欲求ばかりを優先させてしまう傾向にあります。自らの価値基準が他人からの承認や支持のため、他人に嫌われることに強いストレスを感じます。
仕事面では、控えめで気配り上手でいつも頼られる存在である一方で、断ることができずに他人の仕事まで引き受けてしまったり、つねに他人の顔色ばかり窺って自分の意見を持つことや主張することができなかったりします。
「他人を喜ばせろ」という強いメッセージは「主張するな」「重要であるな」のような禁止令となって、思考や行動の制限を課してしまうこともあります。
3.努力せよ(Try Hard)
「努力せよ」は、子どもの頃、親から繰り返し「一生懸命やりなさい」といわれ、常に努力することを強いられてきた人が、努力しなければ認められないと決断してしまうドライバーです。
このドライバーを持つ人は、常に努力していなければ認められないように感じ、いつも必死の状態で何かを試みている傾向にあります。楽して、力を抜いて生きるなんてとんでもないことなので、リラックスして楽しそうにすることもできなかったりします。
仕事面では、高い目標を設定し懸命に働き、困難で時間がかかる状況でも持続的に取り組む一方で、常にたくさんのタスクを遂行しているが、実際の結果につながらなかったりもします。また他人に対して「もっと頑張ることを期待してしまう」という側面もあります。
「努力せよ」という強いメッセージは「満足するな」「リラックスするな(くつろぐな)」「諦めるな」のような禁止令となって、思考や行動の制限を課してしまうこともあります。
4.強くあれ(Be Strong)
「強くあれ」は、子どもの頃、つねに親から「泣くな」「こらえなさい」、それくらいの痛みくらい「我慢しなさい」と言われ続けた人が「強くあらなくてはいけない」「弱さを見せてはいけない」と決断してしまうドライバーです。
このドライバーを持つ人は、喜怒哀楽を顔に出さず、つねに自分を鼓舞して積極的な態度をとったり、自身の強さを示そうとする傾向にあります。弱さを見せることは恥なので、簡単に泣いたり頼ったりする人に腹が立ったり、軽蔑したりします。
仕事面では、寛大でつねに自己の前に他人を助け、個人的な物事や感情に捉われることなく、危機的な状況においても物事を遂行する一方、抑え込んでいるストレスが他人や外に爆発したり、溜め込んだストレスが内部的なダメージにつながることも。また他人に対して「強くなることを期待」し、弱者を軽蔑するという側面もあります。
「強くあれ」という強いメッセージは「自分の感情を示すな(子どもであるな)」「助けを求めるな」のような禁止令となって、思考や行動の制限を課してしまうこともあります。
5.急げ(Hurry Up)
「急げ」は、子どもの頃、親からつねに「早くしなさい」「もっと急いで」と繰り返し言われ続けた人が「早くしなければいけない」「急がなければいけない」と決断してしまうドライバーです。
このドライバーを持つ人は、じっとしていることができず、いつもせかせか急いでしまう傾向にあります。のんびりすることや時間を無駄にすることはたえられず、つねにスケジュールが埋まっていると安心します。
仕事面では、アウトプットと発信に重点を置き、すぐにたくさんのことをする能力を持つことから、与えられた仕事はスピーディにこなす一方で、その精度・正確さに問題があることも。また「何もしない」ことや、準備が整う前に、他の人に何かをさせることを嫌う、何でも効率で考えすぎるという側面があります。
「急げ」という強いメッセージは「長い時間をかけるな」「リラックスするな」「時間を浪費するな」のような禁止令となって、思考や行動の制限を課してしまうこともあります。
あなたの衝動を確かめる「ドライバーチェックリスト」
わたしたちを無意識に駆り立てるドライバー。あなたは自分がどんなドライバーを持っていると思いますか。
ドライバーには一定のパターンがあるため、チェックリストでどのドライバーの影響が強いのかを確かめることができます。
以下のチェックリストで、各グループごとに「自分に当てはまる」と思うものに☑してみてください。
【グループA】
□ 会話をしている時、人の話を遮ってでも 相手の考えを訂正したり、自分の意見をはっきり述べたい、という衝動を感じる。
□ 話す時、肩や首などが緊張する。
□ 話す時、要点を指で数えあげたり、多少オーバーなジェスチャーをすることがある。
□ 何をしても、これで十分だろうかと不安を感じたり、念のために何かしておきたい衝動に駆られる。
□ ここででやめておけばと思いながらも、ツイツイひとこと余計な事を言ってしまう。
【グループB】
□ 会話をしている時「できるだけやってみます」「やってはみますが」など責任をぼかす表現が多い。
□ 質問にズバリ答えず、曖昧な答え方、間接的な答え方をしてしまう。
□ 話を聞く時、前のめりになり熱心に聞こうとする。
□ 何事も「努力しなければ」「努力してればなんとかなる」と自分に言い聞かせる。
□ 話す時、肩に力が入り、胃などに緊張感がある。
【グループC】
□ 話をしている時「ね、そうでしょ」のような同意を求める言葉や、「それでよろしいでしょうか」のように、相手の御機嫌を伺う言葉が多い。
□ 話す時、胃などのからだの奥のほうに緊張感を感じるが、肩などはあまり硬くならない。
□ 何事につけても「他人に十分満足させているか」「私は未だ気配りが足りないのではないか」と気になる。
□ 大勢の中で出しゃばらないように気をつけている。目立つ行為はしたくない。
□ 話す時、他の人に比べうなずく回数が多い。
【グループD】
□ 会話をしている時、他人が話し終えるのを待てずに、他人が話し終える前に遮るように話してしまう。あるいは、そうしたい衝動を感じる。
□ 他の人と比べ、つねにせかせかしている。
□ 何をしていても「時間内にやり終えられないのではないか」という不安を感じる。
□ 貧乏ゆすり、指で机をたたくなど、身体の一部を小刻みに反復的に動かす癖がある。
□ 会話の中で「さあ、やろう」「急ごう」」というような急き立てる言葉が多い。
【グループE】
□ 他の人と比べ、動きがぎこちなく、堅苦しい。
□ 感情を表現するのが苦手で、「別に」「何でもないよ」など、感情を抑圧するような言葉をよく使う。
□ 自分の弱みを他人に見せたくない。
□ 話をする時、声の抑揚がなく、単調で機械的である。
□ 腕組みしたり、足を組むことが多い。
いかがでしょうか。
グループAの項目の☑が多かった方は
完全であれ(Be Perfect)
グループBの項目の☑が多かった方は
努力せよ(Try Hard)
グループCの項目の☑が多かった方は
他人を喜ばせろ(Please Others)
グループDの項目の☑が多かった方は
急げ(Hurry Up)
グループEの項目の☑が多かった方は
強くあれ(Be Strong)
のドライバーの影響を受けている可能性が髙そうです。
チェックリストの結果は、自分が普段どんなドライバーの影響を受けているのかを自覚するための参考にしていただければと思います。
幼少期に無意識に決心したドライバーの影響を回避するのは簡単ではありません。
それでも、自分がどんなドライバーを持っているのかに気づくことができれば、普段、感じている衝動について「今の私を突き動かしているのはドライバーのせいかもしれない」と理解できるようになるかもしれません。
まとめ
私たちは幼少期にさまざまな「拮抗禁止令」を決心しています。
そのなかでも「ドライバー」と呼ばれる5つの「拮抗禁止令」はとても厄介なことに、私たちの行動を無意識的に駆り立ててしまいます。
振り返って私自身も、これまでつねに「○○しなければいけない」という思い込みに囚われて生きてきたと思います。
私の場合、これまでは「急げ(Hurry Up)」のドライバーの影響を強く受けていると思っていました。でも、おぼろげな幼少期の記憶を辿ってみても、そんなにせかされた強い記憶は思い当たりませんでした。
今回、拮抗禁止令について調べ、ドライバーチェックリストを試してみると、どうも「完全であれ(Be Perfect)」の影響を強く受けているのではないか、と思い当たりました。
そうすると、この「完全であれ(Be Perfect)」は、もしかしたら、幼い頃、父親から褒められることなくいつも「ダメだな」といわれることで課してしまった「お前であるな」という禁止令に拮抗する禁止令として課しているような気もします。
「お前であるな」<「完全であればお前であってもいい」
というように禁止令に拮抗して(重なって)かかっているのかもしれません。
もしかしたら、あなたに強い影響を及ぼしているドライバーの根底にも、何かの禁止令が潜んでいるのかもしれません。
あなたの行動を駆り立てる5つの「拮抗禁止令(ドライバー)」についての考察は以上です。
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