商品の「買い占め」が発生してしまう理由【ゲーム理論】

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こんにちは。

あなたは、特定の商品を必要以上に買い占めしたことはありますか?

新型コロナウイルスの影響により、マスクをはじめ、トイレットペーパーや生理用品、お米、レトルト食品など、さまざまなものが店頭から消え購入しづらい状況になりました。

生産が消費に追いつかないマスク以外の商品については、十分、供給可能な状態だったにも拘らず、どうして情報通信技術が発達した現代社会で「買い占め」が発生してしまうのでしょうか。

実は、たくさんの人がデマに踊らされ、買い占めを行なってしまうのには、「私たち人間が、社会的な環境で、最適な行動を選択する際の思考プロセス」が影響しているのです。

今回は、商品の「買い占め」が発生してしまう理由について考えてみます。

最も良い選択をするための思考法「ゲーム理論」

あなたは「ゲーム理論」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。

ゲーム理論とは「利害関係を持つ相手がいる状況で、自分と相手の利益を考え、最適な行動を決める」ための思考法のことで、経済学をはじめ経営学、政治学、法学、社会学、人類学、心理学、生物学、工学、コンピュータ科学などのさまざまな学問分野にも応用されている学問です。

このゲーム理論に、商品の「買い占め」が発生してしまう理由を当てはめて考えるとどのようになるのでしょう?

ゲーム理論の代表的なモデルとしてよく挙げられる「囚人のジレンマ」と比較しながらご紹介します。

「囚人のジレンマ」とは

「囚人のジレンマ」とは、ゲーム理論を考える際の有名な具体例のことです。

あなたも囚人Aになったつもりで考えてみてください。

あなた(囚人A)はある犯罪の容疑として逮捕され、尋問を受けています。別の部屋では同じ容疑で逮捕された囚人Bが尋問を受けています。

あなたと囚人Bは、お互いの状況が分からず、意思疎通することもできない状況です。

このような状況で、あなたを尋問する刑事が、次のような条件を提示しました。

「もしこのまま2人とも自白しなければ、2人とも懲役2年の刑罰を受けることになる」

「もしあなたが自白し、相手が自白しなければ、あなたは無罪、相手は懲役10年になる」

「もし2人とも自白した場合は、2人とも懲役5年になるだろう」

さあ、あなたなら自白しますか?それとも黙秘を続けますか?

あなたにとって最も魅力的な状況は、自分だけが自白し無罪になることです。しかしそれは相手も同じ。もしそれを狙って2人とも自白すれば懲役5年になってしまいます。

もし、あなたが囚人Bと協力することができれば、2人とも黙秘を続ければ、懲役年数は2人とも2年ですみます。しかし、相手が裏切って自白した場合、懲役10年になってしまうというリスクがあります。

自白した場合:無罪または懲役5年

自白しない場合:懲役2年または懲役10年

というような状況。

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お互い協力すれば懲役2年ですむ(パレート最適)のですが、自分にとって最も魅力的な状況を得得るため、もしくは最も最悪な状況を回避するために、結局、2人で協力した時よりも悪い結果に落ち着いてしまう(ナッシュ均衡)。

このような状況を「囚人のジレンマ」といいます。

商品の「買い占め」が発生してしまう理由

では、商品の「買い占め」が発生してしまう理由を囚人のジレンマの状況に習って考えてみましょう。

あなたは「トイレットペーパーなどの紙製品が不足する」といううわさを耳にして、スーパーまでやってきました。店頭にはまだトイレットペーパーが山積みされています。

「もし噂がデマなら、このまま誰も買い占めなければ、みんな普段通り購入できる。」

「もし噂が真実なら、今、買い占めないと、あなたはこの先しばらくトイレットペーパーが買えなくなってしまう」

「もし噂がデマで、あなたが買い占めなかったとしても、誰かが買い占めると、あなたはこの先しばらくトイレットペーパーが買えなくなってしまう」

「みんなが買い占めてしまうと、トイレットペーパー不足の状況が長引いてしまう」

さあ、あなたなら買い占めますかしますか?それともしませんか?

噂がデマである場合、全員とって最も魅力的な状況は、誰も買い占めずに、普段通り購入できること。

しかし、もし誰かがデマに振り回され買い占めを行なってしまうと、あなたが買えないという状況が発生してしまう可能性があります。

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つまり買えないという状況を避けるための最も合理的な選択は、「買い占め」することなのです。

悲しいかな。噂がデマだろうと真実だろうと、「買い占める」ということは、人間が個人の利益を考える際の最適な行動なのです。

まとめ

今回は、商品の「買い占め」が発生してしまう理由について考えてみました。

「買い占め」というとあまり良い印象は持たれませんは、「ゲーム理論」の観点で見ると、利益を得るためには合理的な選択であるということがわかります。これでは、たとえデマでも買い占めが発生してしまうのは仕方ないような気がします。

買い占めを回避するための、理想的な解決方法。それはお互いに譲り合い、協力することです。

こんな時だからこそ、みんなで譲り合って、協力し合える社会であればと願います。

商品の「買い占め」が発生してしまう理由についての考察は以上です。

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