こんにちは。
世の中には大切にした方よいこと、大切にしないと後悔してしまうことがたくさんあります。よくいわれるのは「時間」や「若さ」「健康」「家族」「友人」「お金」など。どれも失くしてしまってから、失ってしまったものの大切さに気づかされるものばかりです。
これらと同じように(もしかしたらそれ以上に)大切にしていないと大きく後悔するはめになりかねないものに「信用」があります。
今回は、信用を大切にしなければならない理由について考えてみます。
信用力ってどんなことに影響するの?
私たちの社会では「信用」がさまざまなところで影響力をおよぼしています。とはいえ、信用はお金のように目に見える数値として数えられるものではないため、どれくらい増えているのか、それとも減っているのかはすぐには気づきにくいもの。そのため、人によっては、とつぜん信用の影響する事態に遭遇し、愕然としてしまうこともあるかもしれません。
例えば、クレジットカードを作る場合は「勤続先」「雇用形態」「勤続年数」「年収」などの情報からあなたの「信用」が審査されます。「勤続先」1つとっても知名度が高く安定している企業では問題ありませんが、自営業などでは厳しく審査(=信用が低いと判断)されてしまうことがあります。また、正社員に比べ契約社員やアルバイトは「不安定な要素が多い(=信用が低い)」とされクレジットカードが作れないこともあるのです。
クレジットカードであれば、作れないだけで済むかもしれません。しかし「信用」が低いことが大きな差になってしまうこともあります。それは住宅ローンを借りるときです。
クレジットカードと同じように、住宅ローンを借りる際も「勤続先」「雇用形態」「勤続年数」「年収」などからあなたの「信用」が審査されます。(他にもクレジットカードの履歴や他のローンの状況など、大金を融資することもありクレジットカード詳細に厳しく査定されます)この際、安定した大企業の社員や公務員といった「信用」が高い人ほど、ローン金利に優遇を受けられるのです。
ただでさえ借りる金額の高い住宅ローンのこと。仮に3,000万円の住宅ローンを組む際に2%の金利優遇を受けられるとしたら、優遇されない人との差額は60万円にもなってしまいます。
また昨今では、就職説明会などにエントリーする際に出身大学(学歴)によってはエントリーが表示されない、ということがあるといわれています。いわゆる「学歴による足切り」です。しかし、これも「信用」という視点からみると仕方のないことといえます。
2001年にノーベル経済学賞を受賞したマイケル・スペンスが提唱した「シグナリング理論」では、教育は個人の能力を他人に知らせる「信号(シグナル)」として扱われるとされています。
これはどういうことかというと、企業は学生(求職者)一人ひとりの実力を正確に把握することは困難です。そのため、学生(求職者)は自分がどれだけ優秀なのかを積極的に知らせなければいけません。そのためのシグナルが学歴です。
学歴は「大学で実力をみがいたこと」を証明するものではなく、あくまで「大学を卒業するだけの実力がある」ことを知らせるためのシグナルとなるのです。この際、一流大学を卒業するために教育に対して費やした労力やコストが、2流以下の大学に比べ評価される(=信用が高い)のは当然なことだといえます。
このように私たちの社会では「信用」の高い人が優遇されることがたくさんあります。
信用力はどのように評価されるのか
では私たちの「信用」はいったいどのように評価されるのでしょう。
最もわかりやすい評価基準は、あなたの所属する組織を基準とした評価です。これは、先ほどのシグナリング理論にも通じますが、人は他者の「信用」を正確に把握することはできません。そのため、はじめは他者の示すシグナル(学歴や所属する組織・役職)によって「信用」を判断することになります。
この評価方法は妥当なのか、と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに学歴が低く、大きな企業に所属していなくても立派に大成されているかたはたくさんいらっしゃいます。問題は、そのことを私たちが評価・判断できないことなのです。
一方、学歴や所属する組織・役職は、個人の能力を正確に把握する指標とはなり得ませんが、そこに至るまでの過程において「教育」に対しより多くのコストを支払ってきたということを示すシグナルとなります。
資本主義社会において、実力が未知数の際により多くのコストを投資したもの(この場合は人)が評価(=信用)が高くなるのは極めて自然なことなのです。
学生のうちにしっかり勉強して、より上位の大学に入ることの意義は、社会においてより信用力の高い組織に所属するためともいえるのです。
社会で成功するために必要なもう1つの信用
とはいえ、学歴や組織・役職は、社会に出た際のスタート地点を決めるもの。人間関係において、学歴や組織・役職はあくまでその人の「社会的な信用」を示すシグナルでしかありません。
では、社会で活躍するために必要な信用とはどのようなものでしょう。
どうやら、人間関係による「信用」は「互恵的な交換」の繰り返しによって構築されていくようです。
例えば、「相手の善意を信じると自分が最も得をするが、相手が裏切ると大きく損をする、逆に相手を信じない選択をした場合は相手の出方により、そこそこの得と損をする」というようなゲームにおいて、お互いを信じることで互いがもっとも得をする選択を続けていくと「信用」は高まっていきます。
つまり、この「互恵的な交換」とは、事前の約束事や取り決めなく行われる交換で、互いを信じてリスクをとることで時間をかけて形成される「信用」なのです。
これと似たような協力関係に「交渉による交換」があります。これは自らが提供するものと相手から得られるものを、事前の交渉で決めているような状況です。このような状況は、約束事が明確な分リスクが少ない反面、「互恵的な交換」に比べ「信用」の高まりは少なくなります。
前者が「仲間意識」を感じられるような関係なのに対し、後者は「ビジネスライク」な関係といえます。そして、社会で成功するためには、この「仲間意識」による「信用」(人望)が大切なのです。
また「仲間意識」を感じやすい状況(同郷出身、母校が同じ、共通の趣味など)で親しくなりやすいのは、お互いを「信用」しやすいようなベースが整っていることも大きな要因です。
能力がありモラルが高いこと=信用とはならない
ビジネスの世界において「能力があること」「モラルが高いこと」は大切なことです。しかし、人間関係の「信用」という面においては必ずしも大きな要因ではありません。
例えば、いくら能力が高く、モラルが高い上司でも、部下への配慮が足りなければ部下からの「信用」(人望)を高めるのは難しいものです。そして「信用」の低い上司の言葉を、部下は”たとえ理性では正しいと認識していても”素直に聞き入れることができなかったりもするのです。
一方、上司から自分への配慮が感じられる状況では、上司の能力やモラルが極端に低いような場合でなければ、仲間意識が強まり部下から上司への「信用」も高くなる傾向にあるのです。
会社などで「あの人、能力はあるのだけれど…」といわれながらもなかなか出世できない人は、そういう面において会社からの「信用」に足りていないということが原因だったりもします。
信用が高まることのメリット
では信用が高まるとどのようなメリットがあるのでしょう。
発言力の向上
人は「信用」ない人の話をなかなか聞いてくれないもの。
たとえそれが真実だとしても、まったく同じことをいっても「世界的な権威のある人」がいうのと「無名の人」がいうのでは、信じてもらえる可能性は大きく異なります。これは「権威」という分かりやすい信用の指標があるためです。
また、より身近な人間関係においては「権威」以上に「仲間意識」が重要なファクターを占める場合があります。
いくら正しいことをいっているとしても、人は仲間のいうことは信用しても、他人のいうことは信用しないものなのです。
つまり「権威」や「仲間意識」などによる「信用」はあなたの発言力=影響力を高めるための重要な要素なのです。
地位の向上と収入の増加
「お金は信用を数値化しただけのもの」といわれることがありますが、信用の高さは収入にも大きな影響を及ぼします。
あなたの「信用」が高まっていくと、あなたはより責任のある仕事や地位(役職)を任されるようになるとともに、その責任に応じた対価(収入の増加)を受けられるようになります。
この際、仕事量と収入の関係は比例ではなく、収入は責任という係数により大きく増加していきます。
さらに責任のある地位になればそれだけ重要な仕事(=やりがいのある仕事)や判断を任されるようにもなります。
「信用」の上昇係数の増加
「信用」は高くなればなる程、より高めやすくなっていきます。これは「信用」の高い人の方がより強い影響力をあたえることができることも関係しています。逆にいえば「信用」が高い人ほど下落のリスクも高くなるともいえるので注意が必要です。
「信用」の使い方には細心の注意を
「信用」は比較的時間をかけて形成されるもので、仲間意識が高まるような共感できるものでもなければ一朝一夕に高めることは難しいもの。しかし、失う時はあっという間に失ってしまいます。
先にご紹介した「相手の善意を信じると自分が最も得をするが、相手が裏切ると大きく損をする、逆に相手を信じない選択をした場合は相手の出方により、そこそこの得と損をする」というようなゲームでも、1度でも相手に裏切られ大きく損をしてしまうと、その相手を再び信じるには、また改めて小さな「信用」を積み重ねて行く必要があるのです。
とくに日本では1度の過ちに対してとても厳しい目が向けられることが多い気がします。(有名人なども1度のスキャンダルで叩かれ続けたりしますよね。)
また「信用」を使えば、他人にある程度のムリを聞いてもらうこともできますが、あなたの信用口座の信用残高は確実に減少してしまいます。
まとめ
社会的動物である私たちは、人からの協力やサポートなしでは難しいことがたくさんあります。
そんな私たちが社会の中でさまざまな人とつながって生きていくためには「信用」はとても大切な要素です。それは会社や学校、友だちグループなど、どんな組織でも、そして1対1の関係においても同じです。それを理解せずに「信用」の形成をおこたっていると、いつか大きなしっぺ返しをくらってしまう可能性もあります。
また、所属する組織や役職という権威を自分の「信用」のよりどころにしてしまうのも考えものです。その「信用」は、あなたが組織や役職を退いた瞬間にあっという間に失われてしまいます。そうなっていまうと、あなたは社会のでのつながりを失ってしまうことにもなってしまうことにもなりかねないのです。
そんな事態に陥ってしまわないためにも、普段から「信用」口座の残高に注意しておくようにしましょう。
「金の切れ目は縁の切れ目」という言葉がありますが、「信用」にも同じことがいえるような気がします。もし何か困った事態に直面しても「信用」が高い人なら、かならず誰かが救いの手を差し伸べてくれるのです。口座の「信用残高」にはくれぐれもご注意ください。
信用を大切にしなければならない理由についての考察は以上です。
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